WEB連載、はじめました。
こんにちは。
一般社団法人をかしや代表理事「マロ」こと菊間 彰です。
さて、今月よりガイド技術、インタープリテーションに関する連載記事を、WEB上で持たせてもらうことになりました。
サイトは「観光Re:デザイン」という観光系のWEBサイトです。
連載タイトルは
「小さなまちのどこにでもある資源を魅力あるストーリーに変え、伝えるための12のコツ 」
まちの印象は、ガイドさんで決まります!
要は私の専門分野であるガイド技術「インタープリテーション」の手法と、インタープリターとしての「あり方」に関する記事なのですが、まちづくりやさまざまな観光業に関わるみなさんが読者なので、今回あえて「インタープリター」「インタプリテーション」という言葉を使わずに書いてみました。
全くガイドのことをしらなくてもインタープリターをしらなくても読めるように書きました。
今回は第一話で、今後月一のペースで12回連載します。
ちょうど一年間ですね。
ぜひ多くの方に読んでいただきたいと思っています。
今回の記事もぜひ読んでいただきたいのですが、以前に同じ「観光Re:デザイン」さんで読み切りの記事も書かせていただいたので本記事後半ではその記事を掲載してみたいと思います。
ぜひお楽しみください。連載の方を先に読みたい方は、こちらをご覧くださいませ。
それではどうぞお楽しみください。
小さなまちのどこにでもある資源を魅力あるストーリーに変える伝え方とは
自然を対象にしたガイド風景。しかしインタープリターの活躍の場はそれだけではありません
インタープリターとは?
寺社仏閣でのガイド風景。インタープリターの活躍の場はさまざまです
私の仕事はプロのインタープリターです。インタープリターとは、自然や歴史や文化などの案内人のこと。平たくいえば「ガイド」です。しかし、一般的なガイドとは少し異なります。みなさんは「ガイド」と聞くとどんなイメージをお持ちでしょうか? 自然や歴史や文化などにすごく詳しくて、聞けばなんでも答えてくれる人?
ガイドの中にはそんな方もたくさんいらっしゃいますが、私たちインタープリターは必ずしもそうではありません。「知識」や「情報」を伝える一般的なイメージのガイドとは異なり、知識を伝えることを主な目的としていないのです。時には、知っていてもわざと答えなかったりします。
またインタープリターは「自然案内人」と訳されることもありますが、案内する場所は自然の中に限りません。お城などの豊かな歴史や文化を持つスポットや、一見何気なく見えるまちなみ、地球の歴史に迫るジオパークだったりもします。あらゆる場所を案内するのです。お客様は子どもやカップルも含めあらゆる人を対象とします。
あらゆる場所であらゆるお客様に満足していただくためには、知識や情報を一方的に喋り倒すことは得策ではありません。なぜならば、多くのお客様は、勉強ではなく楽しみのためにその場所に来ているからです。それなのに、ガイドが一方的にマシンガンのように喋ってしまったら、楽しむどころかその場所のことを嫌いになってしまうかもしれません。
そこで私たちは喋るのではなく「体験」を通じて伝える仕掛けをします。その場所の魅力が伝わる「アクティビティ」と呼ばれる体験をつくるのです。参加者が自ら魅力を発見し、気づくことのできるような「体験=アクティビティ」をデザインし、それを通じて「伝える」のがインタープリターの仕事なのです。私はいろんな場所でそのようなガイドをし、そしてガイドさんの育成研修をしています。
体験をデザインする
三原城駅前からツアースタート。三原城主の小早川隆景公の銅像前にてフリップを用いて解説
では具体的には、インタープリターはどのように体験をデザインし、魅力を伝えていくのでしょうか? まずは、その場「ならでは」の魅力を探すことからはじめます。よそでもできる体験はその場所でする意味がありません。どんな場所にも、その時にその場所にしかないものがあります。インタープリターはそんな「今、ここ」にしかない魅力を見出し、それを体験化するのです。
具体的に例をあげてみましょう。
以前関わった仕事に、広島県三原(みはら)市のガイド育成研修があります。三原というまちの魅力を伝えることのできる「おもてなしガイド」を育成する仕事です。私が研修を行う場合、知識や情報提供をメインとすることはまずありません。知識や情報も大事ですが、それは必要に応じて出す「引き出し」にすぎず、後からでも独学で身につけることができるからです。それよりも大事なことは、徹底して「伝え方」の技術を訓練することだと考えています。つまり知識を体験化することのトレーニングです。そのためにまちの魅力を調べ、それを伝えるにふさわしい「アクティビティ」を考えます。
研修に先立ち、1日かけて打ち合わせと調査を行いました。三原には450年ほど前、「三原城」という、海に面した広大なお城がありました。しかし戦後、城の本丸の真上を東海道本線と新幹線が貫通します。そして長大な石垣も今ではごく一部を残すのみとなり、かつての城の敷地はまちの中心部となり、現在ではパッと見ただけではそこに城があったことさえわからないほどです。
三原城天守台からの景色。かつての城の天守台と同じ高さに新幹線三原駅のホームが見えます
しかしこういうまちにこそ秘められた面白さがあります。例えば新幹線三原駅のホームの真下にはかつての三原城の石垣があり、そのすぐ横には自転車置き場があります。極めて現代的な新幹線が、450年前の石垣に支えられているのです。このギャップは面白い! ところが、かつてこのまちに城があったという事実と、石垣が新幹線ホームの土台に使われているという事実を知らない限り、一般の人がその面白さに気付くことはありません。そこでこれを体験化することにしました。ギャップに気付くアクティビティを実践することにしたのです。
450年前につくられた石垣の一部を現在でも見ることができます
いざ、体験!
さて、研修本番。作成したアクティビティを参加者の皆さんに体験してもらいます。今回実施したアクティビティは、A4〜A5程度の厚紙で作った四角い枠をフォトフレームに見立て、まちにある魅力的な景色を写真に撮るというもの。名付けて「三原今昔写真館」。実施手順は以下の通りです。
①4~5人一組のグループに分かれ、グループで一つ四角い枠を持つ
②決められた範囲でまちを歩き、グループごとに「過去と現在が入り混じった」面白い場所を探す
③その場所を枠で「写真」として切り取る。構図や写真のタイトルもグループのみんなで考える
④各グループが撮影した今昔写真(風景)を全員で順番に見て回る
⑤参加メンバーの感想を聞き、みんなでシェアする
⑥インタープリターが「実はあの石垣は450年前のお城の石垣です」と伝える
この様な手順で実施します。時間は30分程度。すると何が起こるでしょうか?
まず、参加した皆さんはワイワイガヤガヤとおしゃべりしながら、グループごとに自由にまちを歩くことができます。ガイドと一緒に歩くわけではなく、あくまで自由に主体的にまちの雰囲気を感じ、音を聞き、眺めることができます。ああでもない、こうでもないと言いながら「過去と現在が入り混じった」場所を楽しく探すことになります。
そして写真に「切り取る」ために、より対象をじっくりと見ることになるでしょう。その後、グループごとに見つけた場所を紹介してもらいます。参加者自身が発言することで、自分たちが発見したことを再確認することにもなります。
ガイド中に参加者が自由に動けることで、みなさんいきいきした表情を見せてくれます
インタープリターがガイド中にすることは、安全管理と時間の管理、それからやることの説明をして、あとは参加者が自由に楽しみ、発見する過程を見守ることです。そして最後に「実は新幹線ホームを支えているあの石垣は、450年前のお城の石垣です」と伝えるだけ。
しかし、その時点で参加者の皆さんはすでにじっくりとまちを歩き、まちを感じ、その過程で古いものと新しいものが共存する風景をごく自然に「自分たちで」発見しています。したがって最後のインタープリターの一言だけで、
「そうか! このまちにはこんなにすごいギャップがあったのか! 面白い!」
と腑に落ちるのです。
自ら気づく重要性
このようにインタープリターは、自分が長々と喋って伝えることはしません。あくまで「体験」を通じて伝える、いや「伝わる」ことが大切なのです。インタープリターがすべき重要なことは、事前にその場の魅力を調査し、それが伝わる体験=アクティビティをデザインすることです。そして本番では、参加者が体験する時間をたっぷりとり、参加者が「自ら」発見し、気付くプロセスを保証すること。自分で体験するからこそ、余計なことを言わなくてもしっかりと「伝わる」のです。
またこの作業は、普段は気付くことのできないそのまちの魅力に光を与え、ストーリーを紡ぐことに他なりません。ともすると見落としてしまいそうな「何気ない」時間や空間の中に魅力を見出し、それを参加者自身に感じてもらう。これにより、多くの人が自分でも気付かなかった自分自身や地域の魅力を、自分で発見できるようになるのです。
そのためにはインタープリター自身が優れた感性を持っている必要があります。多くの場合、地元の人が自分たちの魅力に気付くのは難しいものです。いつも見聞きしている自分のまちは全てが「当たり前」になってしまうからです。しかし外から見れば、当たり前のものなどありません。どんな場所にもそこならではの良さがあり、それはどこにでもあるようなものではないのです。
「当たり前」ではなく「有り難い」。
そう感じることのできる鋭い感性を、インタープリターやガイドは自分の中にしっかりと育みたいものです。
リンク:一般社団法人をかしや
今年度最終回。出張しまなみインタープリター講座@愛知
こんにちは。
一般社団法人をかしや代表理事「マロ」こと菊間 彰です。
久しぶりの投稿となります。
さて、をかしやの看板事業といえば「しまなみインタープリター講座」。
過去8期にわたりしまなみ海道を舞台に実施してきたこの講座は、「コミュニケーション力」「伝える力」「企画力」を身につける総合講座です。
そして今年は初の試みとして、山形、横須賀、愛知の全国3カ所で展開しています。
今回は今年度最終回となる、愛知での講座のご案内です。今まで通り二泊三日、合宿形式での実施です。
2017年度 出張しまなみインタープリター講座
9月26(土)〜18(月・祝) 山形 @やまさぁーべ(山形県大江市)
11月3(金・祝)〜5(日) 横須賀 @オーシャンヴィレッジ三浦(神奈川県三浦市)
(2018年)2月10(土)〜12(月・祝) @愛知県美浜少年自然の家(愛知県知多郡美浜町)
「しまなみは遠い!近くでやってくれ!!」
と言われ続けた8年間、みなさまお待たせしました。
最終回は愛知県知多郡美浜町での実施。
名古屋から1時間圏内です。
ぜひぜひ足をお運びくださいませ!
詳細は下記ご覧ください。
これからも情報を随時アップしていこうと思っています。
多くの方の参加をおまちしていまーす!!
出張しまなみインタープリター講座@愛知
〜「伝えたい」と願う全ての人へ〜
広島県尾道市から愛媛県今治市まで、六つの美しい島を端
しまなみインタープリター講座、略して「しまプリ講座」
インタープリターとは、自然や歴史や文化などのガイドの
しまプリ講座は、このような伝えるための技術や考え方を
そして今年度しまプリは、「しまなみ海道」からはなれ、
出張しまプリ 第3弾は、愛知県での実施。
中京地区のみなさん、お待たせしました!
会場は、海を望む高台にある公共施設「愛知県美浜少年自然の家」。
とてものどかで景色の良いところです。
本講座は、インタープリターのための講座であるとともに
「伝えたいけど伝わらない」というもどかしさを解消
ご縁のある方との出会いをスタッフ一同楽しみにしていま
※修了者は自然体験の指導者資格「自然体験活動(NEA
★こんなことが身につきます!★
・ 伝える力
・ コミュニケーション力
・ 企画の基礎
・スケジュール(予定)
2月10日(土)
13:00 オリエンテーション
14:30 インタープリテーション体験
〜その場所「ならでは」の魅力を伝えるツアーを体験します〜
16:00 講義:インタープリテーション論
〜「伝わる」ために必要な要素をわかりやすく講義します〜
18:00 夕食→懇親会
2月11日(日)
8:00 朝食
9:00 インタープリテーショントレーニング
〜その場所の魅力を伝えるガイドトレーニングをします〜
12:00 昼食
13:00 インタープリテーショントレーニング2
〜参加者と講師からのフィードバックを受けて、もう一度実践してみます〜
17:00 安全管理の基礎
18:00 夕食→懇親会
2月12日(月・祝)
8:00 朝食
9:00 企画実習
〜基本的な企画の立て方を学び、実際に企画を立ててみます〜
12:00 昼食
12:30 企画発表とフィードバック
14:00 3日間のふりかえり
15:00 終了
会場 :愛知県美浜少年自然の家
(愛知県知多郡美浜町大字小野浦字宮後1-1)
http://sizennoie-mihama.jp/
対 象 :16歳以上の
・ 伝える力を身に付けたい人
・営業マン、販売業、教育業など、人とコミュニケーションをとる必要がある人
・ 地域おこし協力隊など「地域」に関わる人
・ 世の中をオモシロクしたい人
・ 一生役立つ技術やネットワークが欲しい人
定 員 :20名
最少催行人数:10名
※2月1日(木)に催行判断をします。
参加費 :19,800円
※自然体験活動リーダー登録には別途登録料が必要です(
講 師 :河野 宏樹(環境教育事務所Leaf代表、JOLA2017特別賞) http://jola-award.jp/winner/615/ 菊間 彰(一般社団法人をかしや代表理事、JOLA2017ファイナリスト) http://jola-award.jp/winner/616/
申 込:下記申し込み専用フォームよりお申込みくださいませ。
※本事業はセブンイレブン記念財団の活動助成をいただいて実施します。
★参加者の声★
今回、しまプリに参加したことで僕の人生おもしろい方向
“場のちから”というのがインタープリテーションにおい
「しゃべりすぎない」ことが何よりも大きな気づきになっ
いろんな立場、性格、特技の人が集まると面白い! (2
知識を伝えることがインタープリテーションだと思ってい
講座で学んだ「企画のしかた」を生徒の作文授業に生かし
同じ事をしても人それぞれ感じ方が違うこと、視点の違い
全体を通してとてもわかりやすく、楽しみながら学習でき
フィードバックの重要性、対象者理解の重要性についてあ